子供を連れたことにより、明らかにアサシンの足取りは鈍る。 追跡者と交戦。モロク南門付近で見られた戦闘の甘さは見受けられない。 強い毒は間違いなく追跡者達の命を奪ったであろう。 (……いや、アサシンは、追跡者全員を殺せなかった) 北に向かって逃げる足跡がある。これは命取りだ。 アサシンはこの失態に気づいていたのだろうか。 僕は何か手がかりが欲しくて、とりわけ濃く残されている毒を調べてみた。 緑ポーションで毒を中和し慎重に変色した砂を取り除いた先に、血の付いた布切れ。 見たことのない文字。 (アサシンに使われる文字だろうか?) 当然何が書いてあるのか分からず、僕は歯噛みする。 逃亡者達の足跡だけがひっそりと。 アサシンの足跡に寄り添うように続く、歩幅の狭い小さな足跡。 何故ふたりは逃げなければならなかったのか、追われなければならなかったのか。 僕は先に先に駆け出そうとする足をおさえ、痕跡を見落とさないよう慎重に調査を続ける。 (……もう過ぎ去ったことだ) どれだけ走ったとしても、二人に追いつけないのだ。 ましてや彼らに手を差し伸べることなど。 | ||