それは、僕の初めての任務だった。 シーフの修練を積み、迎えたアサシンへの転職試験の日。 久々に感じるモロクの、じっとりとまとわりつく熱風が心地良い。 アサシンギルドへと足を向けかけ、ふと足を止める。 (……教官に挨拶していくか) そう思ったのは、なんとなくだ。ふりあおぐ視線の先に巨大なピラミッド。 きっとあの教官は、今も新米シーフを捕まえてはうんちく講釈を垂れてるのだろう。 「お久しぶりです、教官」 僕とそれほど背丈の変わらない新米シーフ担当教官に軽く頭をさげる。 瞬間、首に掛かる紐を引っ張られ、服の下にあった冒険者カードはするりと教官の手の中に。 「ふうん、もう転職か」 「はい、おかげさまで」 「愛想笑いは上手くなったじゃねーか」 しかし相変わらずしけた顔してンなーとニヤニヤ笑う教官にどう返して良いか分からず、 ハアとかイエとか曖昧な相づち。 「そうだ、一つ頼まれてくれないか」 「パシリですか?」 「ちげー、任務だよ任務」 南の砂漠に乱闘の跡があったンだが、手がかりを見つけてきてくれないか、と。 それがコトの始まり。 | ||