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 モロクのくたびれた南門から、僕は外に踏み出した。
 教官が話していた乱闘の跡は、門から数歩先の所ですぐに見つかった。
 多数の足跡、そして鼻につく異臭は毒の匂いか。
 統率のない無駄に跡を残す追跡者達はただの素人、そして逃亡者は間違いなくアサシン。

(任務失敗したのだろうか……)
 僕はどんな小さな痕跡も見落とさないよう、十分注意しながら南へと足を向けた。






(……何か、おかしい)

 南からやがて東へと進路を変えたアサシンの足跡は、奇妙なほど際立って残されていた。
 よっぽどの間抜けか、故意か。
(……きっと後者だ)

 囮なのか罠なのか、僕は慎重に足を進める。



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