前頁 文章メニュー 次頁



 久々に食卓に顔を揃えた父と兄達が、新たに出現したモンスターの話をしていた。

 モンスターには二通りの生まれ方があるという。
 強すぎる恨みや憎しみに囚われた人間がモンスター化したり、、
 或いはそれによって命を落とした人間が、モンスターとなって地上を彷徨い続けるパターン。
 心の奥底にある絶望や憎悪といった人間の負の感情が、モンスターを生み出すパターン。

 何にせよこの世界に人間が存在し続ける限り、モンスターもまた存在し続ける。
 酒場にいたあの男が流す涙の一滴ひとしずくが、モンスターを生み出し続けるように。






「そういえばセイレン、そろそろ出所だって?」

 話題がいささか食事の席には不似合いであり、言葉少なに食事をとる母や妹を気にかけ、
 頃合いを見て二番目の兄がセイレンに顔を向ける。
 出所っておまえは……と、その隣で長兄が微苦笑する。

「はい、今週にも40単位揃いそうです」
「はえーな、長兄より早いんじゃないか」
「そうだな、俺がJOB40になったのは12の時だ。10歳とは異例の早さじゃないか」

 さすが自慢の弟だなと微笑む兄達に、恥じらいながらも誇らしげに頑張りますと答える。
 若くして騎士団師長の座に就く憧れの兄達に褒められるのは、
 セイレンにとってなにより嬉しいことだった。


inserted by FC2 system