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 子供の失踪事件の裏に繋がっていたものは、魔王モロクの復活を企てる組織。
 そして復活の儀式に用いられるのは、子供の命。

 目の前で殺されようとしている子供を、
 気配を殺し陰に潜んでいたアサシンは、どうしても見捨てることができなかった。






 己が囮となり追跡者を寄せ付けてる間に、子供は東門から逃げる。万事順調なはずだった。
 しかし、子供はアサシンの身を案じ進路を変え彼の元に戻る。
 自らの危険を顧みず、そしてアサシンの身を危険にさらすその行為が、
 アサシンにとって、そう、救いになったのだ。

 アサシンとして生まれアサシンとして育った彼が、初めて触れた温もり。
 子供を守りたいと思ったどうしても守りたいと祈った。

 しかしその小さな身体を無慈悲に貫いた銀の刃は、アサシンの横腹まで達した。
 刃を伝って流れ落ちる子供の命。アサシンは叫びながらがむしゃらに逃げる。

「お、おにいちゃ……ち、血が流れて……だい、じょうぶ……?」
 ふるえる小さな手は、アサシンの傷口を押さえようとしている。
 腕の中で少しずつ冷たくなっていく身体を、力の入らない両腕で必死で抱きしめる。
「……ああ、大丈夫だ」

 行く手を阻まれ、モロクに戻ることはもうできなかった。
 それでもなんとしても子供を助けたい、アサシンは傷だらけの身体で必死に闘い、逃げる。

 ……すまない、ちょっと冷たいかもしれないが、泳いで逃げるぞ。

 お前、泳げるか?と軽い口調。
 それはもはや声にならず、冷たくなった身体から返事はない。
 しっかりつかまってろよと、アサシンはふるえる腕で精一杯かき抱く。

 子供は、幸せそうに小さく笑って、頷いた、……気がした。



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