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「痛っ」
 アンクル設置をし損ない、罠の鋭い刃が指先をかすめる。
 広げたてのひらには、もうすでに数え切れないほどのかすり傷。
 セシルは小さくため息をつき、新たにできた小さな傷をぺろりと舐めた。

 昨日転職試験を終えて、今日がハンターとして初めての狩りだった。
 ハンター規定の服も、腹回りがスースーして落ち着かない。
 一向に成長しない胸も、色気のないくびれのない腰も、メリハリのないラインも、
 ないことづくしを見せつけられる気がして、テンションがあがらない。






 セシルは、アンクルスネアの練習に、足の遅いアルギオペの山へと来ていた。
 色鮮やかな大輪の花々は緑に色を添え、甘く誘うような芳香は空気を染める。

 輝きの強い亜麻色の髪をかきあげた。
 見上げる空には、美しく翼を広げて飛ぶファルコンの姿。
 ファルコンは相変わらず上空を旋回したまま、降りてくる気配がない。
 契約のしるしがなければ、とっくに飛んでいってしまっているだろう。
 とても心強い相棒になるらしいのだが、まだ当分先のようだった。



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