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「……ハワードは、鍛冶師になってはいけなかったんだ」
 だから、これで良かったんだよ。

 夫の言葉に、私は目を閉じた。
 男が困惑した声音で何か言ったが、私の耳には届かなかった。
 夫が今にも泣きそうな顔をして笑っていることを、私は知っているから。


「ハワードはダメなんだ」

 才能がないわけではない。むしろありすぎるほどに、計り知れないほどにあるのだ。
 同じ鍛冶師だからこそ、夫には分かるのだろう。
 火に愛され、火に囚われ、火に殺される息子の末路を。






「ハワードがやがて創りあげる剣は、魔剣になる」
 おびただしい血を吸い数多の命を喰らう、魔剣に。



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