「剣士ギルド卒業聞いたよ。おめでと」 プロンテラの西に広がる草原。二人の少年が川辺に腰掛けていた。 セイレンはブーツを脱ぎ捨て、やわらかな木漏れ日にきらめく水面に足を浸した。 白いなめらかな足が揺れるたびに、淡い光が乱反射する。 その光にくすぐったそうに目を細め、ハワードが微笑んだ。 「サンキュー。って、一ヶ月前だぞ」 唇の端を軽く上げからかうように言うと、ハワードは途端に困った顔になる。 「ごめん、工房を見に行ってたんだ」 冗談だよと肩を小突き、ホッとした表情を見せるハワードに話の続きを促す。 良い所だったよ。みんないい人ばかりでちょっと安心した、とハワードは嬉しそうに笑った。 「君はやっぱり冒険にでるの?」 頷くセイレンに、君ならすごいパーティリーダーになるよとハワードは目を輝かせた。 「まだメンバー誰もいないぞ」と、セイレンは苦笑する。 「君のことなら何でも分かるさ」 ハワードが空を仰ぎ、呼吸をするかのように言葉を続けた。 「僕もいつか、君のために強い武器を作るよ」 父さんが君の父さんに武器を作っているように、いつかきっと。 ハワードの目に映る未来のビジョン。 僕のためにと言うけれども、僕のいない未来に目を輝かせる君。 チクリと棘が刺さる痛み。そこからじわじわと広がる不快感。 セイレンは小さく唇を噛み締めた。 | ||