戦場での彼らは酷いものだった。

 その行動に毎度のことながら心底辟易する。同じソルジャーとしていや「人間」として全く理解できない相容れない。目の端に写る男は先程から嘔吐を繰り返す何度も何度も吐くものなどもう何も無いというのにひたすら。饐えた臭い不憫な姿哀れな表情壊れかけの精神とてもカワイソウに思えたからだから。あぁホントに君のこと気に入ってたんだよ短いツキアイだったけれどホント、そう気に入ってたから君の苦しそうな姿見たくい壊れた君見たくないだから。

 オレってほらヤサシイ、だろ? 小さく笑う。

 ソルジャーなんてこんなもんなんだよ。知ってただろ分かってただろ。人でも獣でもモノでも殺した数が壊した数が多ければ多いほど上にあがれる金が貰える英雄になれるってわけ。そういや昔ヒトコロシながら金数えてるヤツ居たっけ。10ギル20ギル……数えて数えて、一人の命が10ギルって安すぎるって思っただろ?それがさ実際オレ達の給料なんてそんなもんなんだよな。所詮しがないヒラ社員だよまったく。……え? そいつ、どうしたって? そうそう確か10万辺りでカウント終わっちまったよ。ヤになったンじゃねーか数えんのも。生きんのも。ま、気持ちわからんでもないけどな。わかったろ? ソルジャーなんてヒトゴロシなんだよ。ジョーシキあるヤツはなるもんじゃないよソルジャーなんて目指したってろくなもんじゃねぇ。

「……って、もう聞こえない、か」

 肩竦めて苦笑。視線戻すと相も変わらずクソガキはお楽しみの最中。いたぶってなぶってアソンデ殺してコロシテ笑って笑い転げてやがる。チッ胸糞悪い。それにひきかえ我らが英雄サマは黙々と淡々と。仕事は迅速かつ端的にほんと二人とも仕事熱心だことおエライこった。

 蒼い蒼い空仰ぎ見て溜息。ゆっくりゆっくり肺に新鮮な酸素送り込んで鉄混じりの淀んだ腐った二酸化炭素吐き出す。


 深呼吸。生きている証。

 空に視線向けたまま、呼びかける。



「お楽しみのところ悪いンだが、そろそろおヒラキにしねーか?」



「夜に啼くつばめ」 2001.04.22
 
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