ポトリ    ポトリ……




白い壁白い天井白い床白い机白い椅子白いドア白いベッド白いシーツ白い白い
シロイ………。



僕は白いキッチンで料理をする。
紙袋からいモノ白いボゥルに移して水で洗う丁寧に丁寧に洗う。
白いまな板にそれ置いて白い包丁で真っ二つ。
白いまな板にの軌跡が広がり白い包丁から滴り落ちるい色。


ポトリ    ポトリ……



塩と胡椒、臭み消しにパセリを少々。
あとは白い鍋に入れてグツグツ煮込むだけ。
料理終了。
汚れた手洗って白いタオルで拭う。
しっかり洗ったつもりなのに少しい色染まってしまったから小さく悪態をついてそのまま白いごみ箱に投げ込む。
後で捨てに行かないといけない面倒臭いけれど仕方ない。
この部屋の住人は何たって白色が大のお気に入りなのだから。




白い本棚白い本白い花瓶白い花白い錠剤白いカプセル白いグラス白いナイフシロイ……。



ポトリ    ポトリ……



部屋の住人はまだバスルームに入ったまま。
出てくる気配がない。
溜息吐いてバスルームに続く白いドアに足を向ける。
白いドア数回ノックして反応が返ってこないこと確認してから、白いドアノブに手を掛ける。
ゆっくりと右に回す。
白い白いカーテンの向こうに、部屋の住人。


ポトリ    ポトリ……



無機質の冷たい白い白い大理石の床に素足。
腕捲りして白い壁に指先を這わせる。
数歩足を進めて白いカーテンに手を触れて撫でてそして横にひく。


白い壁白い床白いカーテン白いシャワー白い石鹸白いポンプ白いバスタブ白い
シロイ………。


アカイ、アカイイロ。



白いバスタブにい液体。
い液体に黒い黒い長い髪が揺らぐ。


ポトリ    ポトリ……



い、アカイ滴。



い水面に落ちてい波紋を描く。
ゆっくりとゆっくりと鈍く。
剥き出しの褐色の肩に落ちる。
鎖骨にそってなめらかに零れ、薄い皮膚に鮮やかな軌跡を残す。

鮮やかに鮮やかに


天井にはい、つい先程までヒトを形作っていたであろう部品が、
くただただ く。



ポトリ    ポトリ……



ザックス。
ザックス。こんなところで眠ったらカゼひくよ。
ねぇ、ザックス。
ほら、ザックス起きて。

肩を軽く揺するとい液体が小さく鈍く波立つ。
小さな呻き声と長い睫毛が微かに震える。
僕は力を込めてその躯をバスタブの中から引き上げる。
い液体と沈んでいた赤黒い液体が混ざり螺旋模様を描く。


ポトリ    ポトリ……



目覚めないその顔に白いシャワーの白いパネル操作して熱い熱いお湯をぶっかける。
………………っ!!
仰向けの状態に熱湯をかけられ気管に容赦なく流れ込み噎せ返る。
寝惚けた頭で状況が把握出来ない言葉にならない。
涙の滲むぼやけた視界にようやく僕の姿が映し出される。
苦しそうな抗議あっさりと聞き流して笑顔でオハヨウと挨拶を返す。
流石のザックスも絶句。
続けようとした抗議萎んで代わりに大きく溜息を吐き躯を起こす。
ザックスの傍に白い床に膝をついて白い石鹸を白いスポンジで泡立てて髪を躯を優しく丁寧に洗い始める。
白い石鹸の微かな香りとザックスの肌の感触がキモチイイ。
……何、入れたの?
僕が振り返り、
ザックスが振り返る。

白いバスタブの方へ。



白い白いバスタブの中に、
 乳白色のシロイシロイ液体。



ポトリ    ポトリ……



あぁ、牛乳だよ。牛乳風呂。
……牛乳? サイテー、よく入るねそんなキモチワルイものに。
お前、牛乳キライだっけ? だから背ぇ伸びないんだよ、クラウド君?
…………大きなオセワだよ!!
ガシガシと白い石鹸の泡洗い落として白いバスタオルで乱暴に水気を払う。


痛ッ、イテ、…………あれ? 何か、イイ匂いする。
………トマトスープ、だよ。アンタの好きな。
ホント!? クラウドイイヤツ。いつでもヨメに貰ってやるぞ。
心にも無い言葉。
アンタそんなこと適当に口走って誰か本気にしたらどうすんだよ?
例えばアンタの目の前にいるヤツとか。


白いバスタオル丸めて白いごみ箱に投げ込む。
勿体無いけれど仕方ない。
ザックスは白以外嫌いなのだから。


白いザックス白いアンタ白い貴方白い君白い言葉白い躯白い心白いシロイ………


再び僕は、
バスタブを振り返る。






ポトリ    ポトリ……




「シロイ、貴方」 2001.05.03
 
inserted by FC2 system